会社を一つにまとめるために

パーパスとは、企業の社会的存在価値のこと。『パーパスのすべて』は、その考え方と企業経営についてまとめています。

一般的に、パーパスは投資家やステークホルダーに向けた企業姿勢の表明とされていますが、本書ではパーパスの本当の価値は、むしろ従業員の意識付けにあるとしています。

パーパスは、会社を成長させる

パーパスが明確な企業は、そうでない企業と比べて倍のスピードで成長するといいます。また、およそ70%の社員がパーパスを理解すると、イノベーションが起こる確率が高くなるそうです。さらに、経営者が長期的な視点に基づいて短期的に不利な決断を下す際、いち早く支持を表明するのがパーパスを理解している社員だといいます。

パーパスという概念は、最近にわかに注目を集めるようになりました。ビジョンやミッションとも似ていますが、これらが自社の成長を志向するのに比べ、パーパスは社会との関係性のなかで実現されます。事業の社会的価値を追求することは、会社を一つにまとめ、社会からの信頼にもなり、結果として競争力を強化します。

良いパーパスが社員の意識を変える

この本のなかで、一つの事例として『三井ホーム株式会社』が取り上げられています。同社は2020年に、社長主導で新たなパーパスを定めました。

「高品質な木造住宅の提供を通して、
 時を経るほどに美しい、
 持続可能なすまいと暮らしを世界に広げていく」

パーパス策定のプロセスでは、インターナルブランディング(社内ブランディング)を重視し、多くの社員インタビューを通じて事業の価値を探っていきました。またパーパス策定後には、その浸透のためにブランドブックの制作や教育プログラムなどを実施したことから、社内の意識の統一がすすんだそうです。結果として社員間の意思疎通がスムーズになり、各プロジェクトの進捗が目に見えて早くなりました。

人は、自らが携わる仕事の意味を求め、これに共感することで意欲を高めます。また価値観を共有する人とであれば、信頼関係をより強固に築けるでしょう。パーパスの浸透によって、組織の質が高まり、企業として進化できたという実例です。

多様な価値観の社会のなかで

SNSが発達したこともあり、多様な価値感が語られる社会となりました。これを「分断」と評することもあるようですが、個人的には、よりよい方向に向かっていると思っています。しかしながら、多様な価値観と組織の意思統一は、必ずしも相性がよくありません。自由意思が尊重される中で、みなが同じ方向を向くには、社員が共感できる理念を掲げることが唯一の解決策となるのでしょう。パーパスは、現代の経営においては必須のものと言えそうです。

なお企業のパーパスは策定して終わりではなく、社員一人ひとりが理解し、日々の仕事のなかで実践していくことが求められます。当事務所は、パーパスに基づいた企業活動をコンテンツ化して発信することを業務としていますが、その本当の目的は社内に理念を浸透させていくことです。企業広報という立場から、会社の一体感の醸成と事業の成長をサポートしていきたいと考えています。

当事務所のパーパスブランディングについて

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事