マーケティング界の大家デービッド・アーカーの著書。ストーリーが、いかに人間の認知に影響を与えるかを、様々な角度から研究した書籍です。
事実と物語の違いとは
ある研究によれば、ただの事実とストーリーを比べたとき、ストーリーには20倍~200倍の効果があるとされています。人間は、単純記憶が苦手です。例えば、電話番号のような無意味な数字の羅列を覚えることはできません。だから、世界史などでは語呂合わせにして記憶します。これは、ただの事実の物語化ともいえます。
事実とストーリーの違いとはなんでしょうか。
1/王が死んだ、王女も死んだ
2/王が死んだ、悲しみのあまり王女も死んだ
例文を二つ並べました。1はただの事実の羅列でしかありませんが、2はストーリーになっています。物語とは、事実の背景を語ることであり、因果関係を説明して、文脈を作ることです。事実そのものではなく、事実と事実の関係性を表現したものが、物語です。
物語こそが企業の本当の財産
本書では、企業とって最も重要なのが、「シグネチャーストーリー」だとしています。シグネチャーとは、直訳すれば署名の事。つまり、自らを自らと証明しうる象徴的なストーリーが、シグネチャーストーリーです。これは企業の最大の財産であり、多くの人の共感を集める企業は、しばしばこうした物語を持っています。
著者によると、シグネチャーストーリーは、「戦略的メッセージ。すなわちブランド・ビジョン、顧客との関係、組織の価値観や事業戦略などを明確化または強化するメッセージを伝える、あるいは支える物語」と定義されています。
シグネーチャーストーリーが本当の差別化を実現する
例えばテスラには、「化石燃料を燃やす文明を、自分たちの世代で終わりにする」という目標があります。彼らはその手段として、電気自動車を開発し、その特許を無償で他社に開放しています。企業のストーリーやパーパスと、商品や活動が一致していることが、テスラにほかの自動車会社とは違った存在感を持たせています。シグネーチャーストーリーを持つ企業は、他者との決定的な差別化を図ることができるのです。
企業の最大の資産は、いまや土地や社屋や預貯金ではありません。永く語り続けられる象徴的なストーリーなのです。
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