自社のどこを磨くのか

「ファイブ・ウエイ・ポジショニング」は、星野リゾートの星野佳路氏がバイブルの一つに挙げる本です。これは、競争戦略を考えるうえで、企業がどこに注力すべきなのかの指標を与えてくれるアイデアです。

顧客の一人ひとりと向き合うために

ファイブ・ウエイ・ポジショニングが提唱された背景には、顧客の意識の変化があります。

いまや企業と顧客の関係は、商品と代金を交換するだけのものではなくなりました。顧客の一人ひとりは、個性ある人間として尊重されることを望んでおり、自分たちが好む方法でビジネスが進むことを求めています。企業が生き残れるかは、そうした顧客の声に応えられるかがカギとなりました。

すべてにおいて一流にはなれない

しかしながら、どのような優良企業であっても、すべての面で完璧であることなどできません。「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」では、顧客が重視する要素を5つに絞り、そのなかでどこに注力するかを選択すべきだと説いています。

同書のあげる5つの要素とは、「価格」「サービス」「アクセス」「商品」「経験価値」。著者の研究によると、成功した企業に共通するのは、いずれかの1つ要素で「市場を支配」し、さらにもう1つの要素で「差別化」を実現し、のこりの3つでは「業界の標準」を維持することだといいます。

このコンセプトでは、2つ以上の要素でトップを目指すことは避けるべきだと言います。さらに重要なこととして、すべての要素において業界標準を下回ってはなりません。

仮に、飲食店を作るのであれば、ある特定の食材や料理に特化して、「商品」をどこにも負けない水準に引き上げる。そのうえで、「サービス」での差別化が行われ、「価格」「アクセス」「経験価値」が業界標準を維持していれば、繁盛店になりえるということでしょう。100円ショップなども、価格で差別化し、品ぞろえで優位を築いていますが、その他の要素では業界標準以上のものは追求していないようにも見えます。

何を磨くのかが、価値観を反映する

「ファイブ・ウエイ・ポジショニング」において重要なのは、自社の価値観を明確にするということです。5つの顧客価値のうち、どこに注力し、またどの要素を業界水準にとどめるのか。それは、経営者の価値観を表現することでもあります。現代の消費者は、商品そのものよりも、企業の考え方や姿勢に関心を払うようになっています。根底にある思想を大切にし、何を磨くのかを大胆に取捨選択することが、本当の意味での差別化につながるのでしょう。

当事務所は、広報という立ち位置から企業の理念や考え方を社内外に広げていくことを目指しています。自社の特徴を伝えるだけでなく、その背景にある想いを表現することで、個性が際立っていくのだと考えています。

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事