近年、企業広報でも「物語」が意識されることが増えました。しかしそもそも物語とは何でしょうか。その疑問を追求するのが「物語学」です。
物語を考える
『千の顔を持つ英雄』は、物語学の古典的名著です。著者の主張によれば、世界中に英雄の物語がありますが、これらにはたった一つの形態しかないそうです。古今東西、あらゆる地域にある伝説があっても、それらは一つの原型から生まれたバリエーションなのだといいます。「真実はひとつ、賢人はそれにたくさんの名前を付けて語る」のです。
英雄譚は、主人公が旅にいざなわれ、途中で出会う仲間やメンターに助けられ、あらゆる危機を乗り越えて目的を果たし、最後には故郷に帰還するという構成を持ちます。これは、アキレスの冒険から日本の桃太郎、さらに現代のスターウォーズやONE PIECEにも受け継がれる、普遍的な形式です。
人類には集合的無意識がある?
彼の考え方の背景には、心理学者のユングの影響があります。ユングは、人間には個人の意識と別に、集団としての意識があると仮定しました。これを「集合的無意識」といいます。その表れが、地域も時間も越えて存在する「一つの物語」といえるのでしょう。作者が特定されず、多くの人たちの口承によって生まれた物語は、人々が共通して持つ願望が顕在化したものとも言えます。
本書は物語研究のための学術書ですので、直接的にマーケティングに関連するものではありません。ですが、広報やマーケティングの領域で「物語」が重要となる中で、世界共通に魅力を持った物語の姿を意識するかどうかは、少なからず成果に影響を与えるでしょう。事実、著名なマーケターの中にも、本書を愛読書として挙げる方もいらっしゃいます。
文学部出身のマーケティング関連業者として
過去、ジョージルーカスは本書から学び、スターウォーズのストーリーを創り上げたといいます。私としても、大学で文学を専攻したものとして、物語論からのアプローチを企業のマーケティングに生かす方法を模索しています。
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