新しい組織の在り方について、様々な視野を与えてくれる書籍です。
社内の軋轢がヒットドラマに
かつて半沢直樹というドラマが流行りました。
視聴してみて驚きましたが、これは本来仲間であるはずの上司と部下における確執(というか足の引っ張り合い)がテーマとなっていました。エンタメとしては素晴らしい仕上がりだったものの、このような内容に多くの人が共感したという事実に、やや不安な想いもありました。
実際、多くの企業が、人間関係で苦しんでいます。本書では、組織の統制力が強くなりすぎると、社員の意識は内部へと向き、やがて社内の序列、評価、手続きなどが過剰に価値を持つようになり、社内政治に強いだけの人間が出世して組織の活力が失われていくといいます。
軍事的な組織論を超えて
筆者は、このような統制力によって組織を維持することを、軍事的世界観と呼んでいます。
企業経営で使われる「戦略」「戦術」「ロジスティクス」「オペレーション」などといった言葉は、多くは軍事由来であり、経営理念が孫子の兵法やランチェスター理論など、戦争研究から生まれてきたことを見れば、筆者の指摘にも説得力があります。筆者は、これからの組織は軍事的世界観から抜け出して、漫画のワンピースのような、冒険的な組織に変わっていくことべきだと提案しています。
「軍事」から「冒険」へ
軍事的世界観では、組織とは戦略を推進する道具ですが、冒険的世界観では社会をよくするためのつながりとして認識されます。同じように、目標は達成すべき義務から、やる気を掻き立てられる問いに。採用は業務推進のための戦力補強から、価値観を共有する仲間探しに。会議は情報伝達の場から、対話と相互理解の場にと変わっていきます。
現在、パーパス経営や、従業員エンゲージメント、人的資本経営などへの取り組みがトレンドとなっていますが、これらが示す方向性は、みな同じです。組織のあり方が軍隊式から、自律型へと変わっていくことを示しています。
新しい組織を目指して
こういった社会にあって、企業は出世や報酬といった「外発的動機」とは別に、働き甲斐や貢献意欲といった「内発的動機」を育てることが大切になります。企業のブランドの意味も、マーケティング的な記号ではなく、企業文化とパーパスに基づくパブリックイメージへと変わっていきます。ちなみに本書の冒険とはQuest(冒険)の意味であり、これはQuestion(問い)と同じ語源を持つものです。拡大ではなく、探求をしていくことが、これからの企業の成長の意味になるのかもしれません。
当事務所は、企業が理想を追い続けるなかで、その想いを言葉にすること、物語として伝えることの重要性を感じ、こうした課題を解決するために設立をしました。新しい組織を構築する中で、コンテンツという側面から貢献していきたいと考えています。
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