当事務所は、自社発信型のコンテンツ制作を軸に、企業広報の支援に取り組んでいます。かつて広報は、主には営業やマーケティングの課題でしたが、最近では、むしろ人事や総務部からの相談が増えています。その背景については、過去記事でまとめていますので、参照ください。
【参考記事】
ブランディングは社内から
理念が企業と個人をつなぐ
思考型の経営理念とは
社内広報における3つの視点
何社かのお仕事を経験する中で、社内広報には3つの視点を持つことが大事だと感じるようになりました。この3つをバランスよく向上させる施策を打つくことで、社内広報の成果が見えてきます。下記、まとめておきます。
一つは、価値観の浸透です
社内広報において、もっとも重要な課題が理念浸透です。みなが同じ価値観を共有し、同じ目標を持って活動できるようにすることは、現代の組織運営では死活的な問題です。社会の変化のスピードが速く、複雑性が増す現代では、「正しい」判断は難しくなります。正解がわからないなかで判断するならば、その基準は価値観しかありません。たとえ間違っていたとしても信念に従う、という姿勢が組織の発展を支えます。組織において、それを支えるのが理念浸透です。社員の一人ひとりが、自分がどうあるべきかをしっかり理解していれば、組織の判断を素早く理解し対応できるようになるでしょう。逆に理念が浸透していない会社は、一人ひとりが考えることができず、単なる作業要員の集まりとなっていきます。
もう一つは、心理的安全性です
心理的安全性とは、対立がないことではなく、むしろ対立を前向きにとらえられる状態のことを言います。Googleの研究では、チームの生産性を左右するのは個々の能力ではなく、心理的安全性だという結果がでたそうです。心理的安全性とは、個人が否定をされないこと、存在を脅かされないことが前提です。しかしこれは、信賞必罰のない「ぬるま湯的組織」とは全く違います。心理的安全性のある組織には、意見の対立、活発な議論、ある程度の厳しさがあります。心理的安全性とは、問題を回避する考え方ではなく、問題が起きたときにそれを乗り越えるための土壌のことです。仕事に厳しく、人にやさしく、メンバーが互いに信頼しあい、良いコミュニケーションと活発な議論を行える環境が、生産性や社員エンゲージメントに貢献します。
最後に、ビジョンの共有です
魚類学者のさかなクンによると、イサキという魚は、海を泳いでいるときは協力し合うが、水槽で飼うといじめを始めるそうです。広い海には多くの食べ物がありますが、敵も無数にいるため、成果を得るには協力が必要です。逆に水槽は天敵がおらず安全なものの、エサは決まった量しかもらえません。他人を押しのけて自己利益を追求する個体が得をします。これは、収益性の高い企業に多い持病のようなものです。「良い会社」というのは安定している反面、出世によるリターンが大きく、組織という名の狭い水槽のなかに自分の居場所を確保する動機を生みます。こうした中では対立が生まれ、社内政治が横行し、人間関係の課題が深刻になります。これらを克服する一つの手段が、ビジョンです。大きな目標が持つ役割は、社員を広い海に連れ出すこととも言えるのです。
いずれにせよ重要なのは、コミュニケーション質を高めることです。そのためには、積極的な情報発信が欠かせないプロセスです。企業の理念や取り組みを物語として伝えることは、人々の価値観をそろえ、会社の雰囲気を変えていくことができる、価値のある活動だと考えています。
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