新しいブランドの考え方

ブランディングほど、定義の難しい言葉はないようにも思います。

ある人はブランドとは信頼だと言い、他の人は理想と現実を埋めるための手段だといいます。教科書的には「個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」ということになりますが、これも、実務レベルで見れば、あまり意味のある定義だとは思えません。

パーパスブランディングとは

私たちの事務所では、ブランドとは『企業理念を実現するための取り組みを物語として発信し、そのことで社会から得られる信頼と共感』としています。

この考え方にもし名前を付けるならば、まさに「パーパスブランディング」ということになるでしょう。特にこの書籍では、「パーパス」ということについて、深く考察をしています。

パーパスとはその企業の存在意義のことをいいます。ビジョンは企業の将来像について語るものですが、パーパスは社会との関係性のなかで定義されます。企業の創業の志や、歴史といった過去にも目を向けることも特徴です。ビジョンを実現するのは社員の一人ひとりですが、パーパスは社会と協力し合って実現に向かいます。例えば、テスラは「化石燃料を燃やす文明を、我々の世代で終わらせる」と語っていますが、この夢は、テスラのオーナーたちにも共有され、ともに目指すべきものとなっています。

社員を一つにまとめることが、ブランドにつながる

パーパスブランディングにおいては、社内/社外の区分は意識されません。パーパスを語る一番の相手は社員ですが、理念が浸透して企業の思想と行動が一致するようになると、その姿が好ましく認知されて、企業への共感が広がっていき、その結果ブランドが形作られていきます。

個人的な経験としても、経営者のなかには、SNSやブログに取り組むのは、むしろ社員にこそメッセージを伝えたいからだという人が増えたように思います。企業の想いを知ってもらうには、きちんと物語化して広く伝えることが大切です。一つの想いを掲げ、地道に、愚直にやり抜くことが、結果として強い企業を作っていくのでしょう。

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