主要産業としてのインバウンド
最近、企業広報やマーケティングのご相談を受ける中で、インバウンド(訪日外国人)対策への意識が高まっていることを感じます。特に飲食店やショップ、観光地に隣接するホテルなど、ローカルビジネスを手掛ける企業にとって、インバウンドへの取り組みは重要課題です。
最新の観光白書によれば、2025年度には訪日外国人数は4,300万人に上り、訪日消費額は9兆5,000億円に迫ろうとしています。 この「約10兆円」という市場規模は、日本の基幹産業である「自動車の輸出額(約10兆円)」や、私たちの生活に密着した「コンビニエンスストアの総売上(約10兆円)」にほぼ匹敵します。観光は、すでに主要産業の一つになったともいえるでしょう。
インバウンドには地政学的リスクや為替、世界情勢による変動リスクが付きまといます。しかしそうした不確実性を勘案しても、ビジネスを維持・成長させるためには取り組まざるを得ない分野です。
かつての旅行誌は、すべてスマホの「Googleマップ」へ
日本を訪れた外国人旅行者は、どのようにしてお店を見つけるのでしょうか。
かつて、ガイドブックや旅行誌を片手に街を歩く外国人観光客の姿がよく見られましたが、そうした光景は完全に過去のものとなりました。現在、国内外を問わず、すべての旅行者がスマホのナビゲーションを使っています。 そして、彼らの画面で常に動いているものが「Googleマップ(Googleマップアプリ)」です。
事実、モバイル検索の3回に1回は「場所に関連した検索(ローカル検索)」であるとされています。 「近くの美味しいランチ」「今から行けるお気に入りのショップ」を探すとき、人々はブラウザの検索窓ではなく、直接Googleマップを立ち上げます。この時、マップ上であなたの店舗が魅力的に表示されているか、あるいは「そもそも存在すら認知されていないか」が、売上を決定的に左右します。
このGoogleマップ上に、自社の正しい店舗情報や魅力を「基本無料」で発信できるツールが、Googleビジネスプロフィールです。 基本的なプロフィールを完璧に埋めることは、現代のローカルビジネスにおいて「のれんを掲げる」のと同じくらい真っ先に行うべきインフラ整備です。
旅行者に寄り添ったコンテンツの整理
注意すべきは、Googleビジネスプロフィールを登録する際に「自分たちが普段使っている言葉」のままでは顧客にとって使い易いとは限らない、ということです。
例えば、飲食店のメニュー登録を考えてみます。GoogleMapにも、店内と同じように、「すぐ出るもの」「揚物」「焼物」「ごはんもの」等と分類して登録しているお店は非常に多くあります。 しかし旅行者が、Googleマップで「揚物」と検索するでしょうか? その可能性は極めて低いはずです。
彼らが本当に検索するのは、「金沢おでん」や「のどぐろ」といった、その土地でしか体験できない具体的な料理名や名産品です。 つまり、MEO(マップ検索最適化)を意識するのであれば、旅行者が「どのような言葉で検索し、何を望んでいるか」を想像し、そのキーワードに応じたメニュー構成へと「再編集」しなければなりません。
外国人向けに「文脈を翻訳」する
また、Googleビジネスプロフィールの「商品メニュー」「サービス」などは、基本的に自動翻訳されないことも留意すべきです。さらに、日本人と外国人では、必要とする情報が違うことに気を付けなければなりません。例えば「とんかつ」を例に考えます。
- 日本人向け:こだわりのブランド豚肉を低温でじっくりと……
- 外国人向け:豚肉にパン粉の衣をつけてサクサクに揚げた、日本で非常に人気のある料理です(Tonkatsu is a popular Japanese dish…) [12]
外国人は「Tonkatsu」という料理自体を知らない可能性があります。知らなければ、「低温でじっくり」と伝えても何のことかわからないでしょう。 他言語で自社がどのように見えているかを常にチェックし、翻訳だけでなく「文脈の翻訳(コンテンツ化)」を行うこと。これが、インバウンド集客におけるプロフィールの強固な武器となります 。
Googleマップをてこに接客力を磨く
Googleビジネスプロフィールを運用する上で、最重要のコンテンツが「口コミ(レビュー)」です。
丁寧な言葉を添えた「口コミお願いカード」などをお渡しして、お客様に自発的な投稿を促す工夫は非常に有効です 。しかし、本当の意味で高評価の口コミを集めるために重要なことは、「来店されたすべてのお客様に、心から満足してもらえる上質な接客・サービスを提供する」ということです。
企業のブランドや価値は、以下の2つの要素から成り立っています 。
- 評価(エビデンスに基づくもの):売上規模や店舗数、利益といった数字で測れるもの。
- 評判(エモーショナルなもの):口コミの星の数や、お客様が抱く「安心感」「好感度」。
現在は、評価よりも評判が大事な時代だともいえるでしょう。実際に良いサービスをしても、お客様が良いサービスを受けたと感じなければ、良い口コミは集まりません。
だからこそ、賢い経営者はGoogleビジネスプロフィールの口コミを「単なる集客の評価」としてだけ見るのではなく、「社内のサービス品質向上(インナーブランディング)の材料」として活用しています。 寄せられた口コミのコメントを題材に社内で勉強会を開き、「なぜこのお客様はこんなに喜んでくれたのか?」「このお叱りの言葉の背景には、私たちのどんなサービス不足があったか?」を徹底的に対話し、全員で共有するのです。
特にこれから、世界1位の観光立国として「海外の富裕層」などのハイエンドな顧客を迎えるにあたっては、英語を話せること以上に、「彼らの高い要求に耐えうる、上質で本質的なサービス(接客力)」が求められます。 Googleマップに届く声に真摯に向き合い、接客の改善ループを回すこと。これこそが、信頼を勝ち取るための最も強固な広報戦略なのです。
SNSとGoogleビジネスプロフィールの相乗効果
Googleビジネスプロフィールは、基本的には店舗のスタッフや、社内の担当者が日々更新(宣言)し続けることが理想です。しかし、地方の中小企業においては、専門の広報やWeb担当者をフルタイムで雇用することが難しいのも現実です。 当事務所では、そうした課題に対する現実的な解決策(セカンドベスト)として、広報まわりのアウトソース(シェアリングサービス)をご提供しています。
私たちがサポートするのは、単なる「Googleマップの初期設定」だけではありません。 企業のパーパス(存在意義)に紐づいた一貫した物語をベースにして、
- SNS(Instagram、X、Facebookなど)の戦略的な投稿
- Googleビジネスプロフィールの定期的な更新・文脈に沿ったメニュー編集
- お客様の声をフィードバックする仕組みの構築
を、統合的に支援しています。 一発逆転のバズを狙うのではなく、誠実でリアルな情報発信をコツコツと積み重ねることで、社会(インバウンド含む)から選ばれ、かつ社内のメンバーが「自分たちの仕事の誇り」を再発見できる強い組織づくりを目指しています。
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