スペシャリストになるか、ジェネラリストを目指すかのか。二者択一で語られがちですが、特に中小企業の広報においては、そのハイブリッドな能力が求められているように思います。それは、体操競技でいえば個人総合の選手のような、多機能型の専門職です。
DXで、逆に負担が増えることもある
広報職が多機能型となった背景には、DXの進展があります。デジタル化によって「社内でできること」が増えました。ローコードツールがあれば自社でWEBの更新や、アプリの開発ができます。デザイン系のアプリケーションも格段に使いやすくなり、テンプレートも豊富に揃っています。簡単なチラシやプロモーション動画くらいなら専門知識がなくても作れるでしょう。スマホカメラの性能も向上し、撮影も自社で行えるようになりました。
しかしこうした進化が、逆に企業の情報発信を滞らせる原因となっています。人材やスキルが十分でないなかで、社内に業務を抱え込みすぎるリスクは小さくありません。内製化が進んだ結果として、WEBの更新が止まりインスタの投稿が滞っていきます。担当者のやる気がないわけではありません。現場が兼務に耐えられず、パンクしているのです。
広報は定常業務になった
一つの解決策は、思い切った投資です。実際、情報発信力が高い企業は、撮影や取材、WEB更新といった業務を内製化しています。ユニクロは自社の撮影スタジオを持っていますし、トヨタは、元報道ステーションの冨川氏を社員に迎え、社内記者として情報発信力を強化しています。内製化が進むのは、広報が定常業務と位置づけられたことを意味します。かつて広報は、季節ごとのキャンペーンや新商品発売時に必要となる非定常的な業務でした。これがSNSの発展によって、営業や経理などと同じ、日常的に発生する仕事へと変化したのです。
多機能型の専門家が価値を持つ
そこで悩ましいのは、中小企業です。大企業であれば、デザイナーやカメラマンを雇うこともできるでしょう。しかし中小企業では、こうした専門家を確保することは簡単ではありませんし、雇ったとところで、そこまで仕事はありません。だから、広報全般を一人でこなせるような、多機能型のスタッフが有用となってきたのです。
それでも、こうした人材を見つけることは簡単ではありません。メディアの業界では、「デザイナー」「カメラマン」「ライター」「編集者」などは、それぞれ独立した一個の職業とみなされており、専門性の高いスキルを持ったプロはいても、すべてをこなせるような人材は育成されてこなかったからです。
当事務所は広報のアウトソースを受ける事業を進めています。その大きな特徴は、体操競技で言えば、個人総合で活躍するような、多機能型の広報専門職であるということです。取材をし、写真を撮り、文章を書き、WEBやSNSへのアップ、チラシの制作などまで、月額契約の中で一貫して受けています。一つひとつは専門家にはかないませんが、企業の日々の情報発信には、大いに役立つと考えています。
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