中小企業に広報が必要な理由

最近、広報に取り組む中小企業が増えています。
その背景には、広報の位置づけの変化があります。かつては、広報とは無料の広告枠をとってくる部署だとみなされ、メディア掲載を狙ってニュースリリースを出すことが主な業務でした。しかし時代は変わり、広報とは企業の取り組みを広く伝え、社会との信頼関係を構築するための活動と位置付けられるようになりました。広報は英語でPR。すなわちPublic(公共)Relation(関係)ですので、ようやく本来の広報が意識されるようになったと言えるでしょう。

ブランドの意味が変わった

かつて、情報発信の主力がマスメディアだった時代には、発信力は資金力によって決まりました。この時代には、高額なテレビCMの枠を購入できる企業こそが、強いブランドを築くことができました。20年ほど前までは、ブランドの教本ではコカ・コーラやナイキ、資生堂やサントリーなど大企業の事例が紹介されていました。

こうした傾向は大きく変わっています。ブランディングの成功事例として取り上げられるなかに明らかに中小企業が増えています。その代表的なものは、奈良の「中川政七商店」や新潟の「スノーピーク」、軽井沢の「ヤッホーブルーイング」、名古屋の「バーミキュラ」などでしょう。どれも、地方に本社を置きながら、WEBとSNSを主戦場として自社の物語を発信し、地道にファンを増やすことに成功した企業です。彼らが証明したのは、大きな予算をかけなくても、十分ブランドが作れるということです。

テレビCMからWEB・SNSの時代に

テレビCMの時代は、15秒や30秒というごく短い時間でインパクトを残すことが求められました。コピーライターやアートディレクターが活躍し、広告とアートが結びついて華やかな時代を作っていました。いまSNS時代になり「バズる」といった現象はあるものの、瞬間のインパクトは意味を持たなくなりました。WEBやSNSの発信は、あくまで長期戦であり、一定水準の自社制作のコンテンツを発信し続けることで、ファンを増やしていくことが求められます。

中小企業にこそ、ストーリーがある

自社制作コンテンツのクオリティとは、美しい写真や文章のことではありません。こうしたものは最低限の見栄えがあればよく、必要なのはぶれない姿勢と継続性です。企業経営は、時代によっても変化していきますが、情報発信には常に一貫性がなければなりません。この一貫性を担保するのは企業理念です。その企業が存在する限り変わらない想いこそがパーソナリティを決め、そのパーソナリティが社会からの信頼や共感を勝ち取るカギになります。

そうした面では、中小企業は実は有利です。地域性やトップの想い、創業の歴史、ものづくりにかける職人の技や独自の技術など、巨大企業にはない個性的な物語が豊富にあるからです。

広報力のない企業は、存在感を失う

これから、広報力のない企業は営業力、採用力、調達力など様々な領域で不利な状況に立たされるでしょう。しかしながら、中小企業にも安価に広報に取り組める時代となり、有利な側面があることも事実です。すぐに結果がでなくても、自分たちの理念や物語に自信をもって、日々の取り組みをしっかり社会に発信しすることは、極めて大切な活動となっていくでしょう。

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