当事務所は、企業広報のお手伝いをしています。広報というと「メディア露出」や「SNS運用代行」などと語られがちですが、個人的な感覚として「人々の意識を変える」ということが最も重要かつ、価値のある役割だと感じています。これまでの経験から、広報に取り組むことで起きる変化についてまとめました。
事例1:対外発信が「社内」へ波及する
ある経営者の方は、「会議や朝礼などで仕事への考え方を語っていても、いま一つ社員に浸透しない」という悩みを抱えていました。そこで、後から見返せるようにと、日々の発言を録音していただき、それを再編集して定期的にブログにアップするようにしました。すると社員から「ブログ読みました」という反応が届くようになったのです。
しかし、その社長は、やや複雑でもあったと言います。なぜなら、ブログに書いた内容は「いつも朝礼で話していること」と同じなのですから。
会社という日常の空間ではスルーされてしまう言葉が、外部向けに発信されることで初めて社員の耳に届き、印象に残るということはしばしば起こります。理由は推測でしかありませんが、朝礼に出席して社長の話を聞くという行為はどこか受け身なのに対し、ブログを読むという行為は自らの意思で行う、主体的な行為であることも関係しているように思っています。また外部へに発信することで、その発言が会社にとってオフィシャルな見解だという意味付けを持つことも理由の一つでしょう。情報発信は、社内を動かすツールにもなるのです。
事例2:ばらばらだった組織の「意思」が統一される
会社においては、メンバーの意思を統一することは決して簡単ではありません。むしろかなり難易度が高いともいえるでしょう。 例えば新商品や新企画を実施する際、社内の人間が「どこか他人事」のように構えてしまっているケースは少なくありません。
ある会社では、全ての新商品について必ずニュースリリースを作成することにしました。発売日をしっかり決め、写真を撮影し商品の特徴や、作り手の想いをまとめます。これをベースに通販サイトやSNS、店頭のPOP、セールストークなども統一し一斉に発信します。そうすることで商品発売の意図と日程が明確になり、やがて成果を感じるようになると、社内の意識もだんだんと一つにまとまっていきました。
広報の本質的な役割は、誰もが「ぼんやり」と感じていることを、明確な「言葉」に変えること、ともいえます。
きちんと言葉に落とし込むことで、全社の戦略が一本化され、チーム全体に前向きな雰囲気が生まれるようになっていきました。
事例3:「情報発信」をきっかけに、現場から改善や企画が生まれる
質の高い情報発信を続けるためには、当然ながら「発信するだけの価値がある情報」が社内になければなりません。 広報の成否を決めるのは、SNSの投稿テクニック以上に、「企業本体がどれだけ価値ある情報を生み出せるか」にかかっています。
ある飲食店ではまず最初にSNSをしっかりやろうと決めました。投稿スケジュールを固定して、「ネタ作りのため」と無理やりにでも企画を考えてもらいました。現場は、最初は面倒そうでしたが、継続していくうちにお客様からの反応も良くなり、手応えを感じられるようになっていきました。1年ほどかかりましたが、やがて現場から自発的に企画が生まれるようになりました。常に新しい提案があることはお客様にも浸透していき、SNSのインプレッションも大きく伸び、今では安定的に前年対比を超える店になっています。
始まりは「SNSに載せるため」だったのですが、それが習慣となり、やがて成果に結びつき始めると、現場の改善意欲やクリエイティビティを引き出すこともできるのです。
広報とは、組織の意識を変えていく活動
広報とは、露出を増やすだけの部署ではありません。 発信を通じて社内を巻き込み、意思を統一し、現場を活性化させていく組織改革ツールとして取り組むべきだと考えています。
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