KPIは「見つける」プロセスに本質がある
「KPI(重要業績評価指標)」や「KGI(重要目標達成指標)」という考え方は、いまや多くの企業で当たり前に使われています。しかし本書『KPIマネジメント』によれば、「本当の意味でのKPIマネジメント」が機能している組織は意外と少ないそうです。KPIが単なる計数管理のツールになり、達成した/しないを問うノルマ主義に陥っているのです。
なぜ、このようなすれ違いが起きるのでしょうか?
その理由は明確です。KPIの前提となる「CSF(Critical Success Factor:重要成功要因)」、つまり業績を左右する決定的なファクターを特定できていないからです。KPIの本質とは、数字を挙げる仕組みを構造として理解し、成果に結びつく重要な要因を見つけ適切に管理することなのです。
ステップ1:ビジネスの全体像を「構造」と「水準」で分解する
本書では、現状を正しく理解するためにはまず「構造」と「水準」という2つの視点から見るべきだとしています。
- 構造:成果が上がる仕組み(システム)を理解すること
- 水準:その仕組みが現在、どの程度の水準で行わているかを把握すること
例えば、営業組織の「売上」を分解すると、次のような数式が出来上がります。
売上 = 訪問件数 ×成約率 × 成約単価
さらに「訪問件数」を分解すれば、アプローチ数 × アポイント率となり、「アプローチ数」は 時間あたり架電数 × スタッフ数 × 稼働時間にまで分解できます。このように、自社のビジネスの全体像を因数分解して、数値化することがスタートラインです。
ステップ2:「動かせる数字」と「動かせない数字」を見極める
すべての数値を並べたら、次に「数字の仕分け」を行います。数字には大きく分けて以下の3つが存在します。
| 数字の種類 | 具体例 | 対策 |
| 定数(決まった数字) | 商圏人口、営業日数、現在の営業人員、めんどくさい上司など | 短期では変化しないもの |
| 変数(自らの意思では変えられないもの) | GDP(景気)、天候、市場トレンドなど | 日々変動するが、コントロール不可能なもの |
| 変数(自らの意思で変えられるもの) | 訪問件数、成約率、アプローチの質など | ここにリソースを集中すべき |
定数や、コントロールできないに変数をKPIに掲げても有効な戦略は生まれません。KPIとは、「業績に決定的な影響を与える数字」×「自らの意思で変えられる変数」を見極め、そこに集中するためのツールです。
ステップ3:「相関関係」ではなく「因果関係」で一つに絞り込む
動かせる変数が見つかったら、最終的な成果(KGI)との関係を分析します。ここで重要なのが、数値には相関関係と因果関係があるということです。単に「Aが増えるとBも増える」という相関関係を追い求めても成果にはつながりません。「Aを動かすから確実にBという結果が生まれる」という因果関係を見極めることが重要です。
そして、ビジネスを本当に機能させたいのであれば、「KPIは最終的にひとつに絞り込む」のが鉄則です。複雑で曖昧なKPIがいくつもあると、現場は何を信じて動けばいいか迷い、振り返りの検証も難しくなります。「これさえ達成すれば、絶対に業績が上がる」という決定的なレバーをひとつだけ見つけ出すことが、KPI管理の要諦といえます。
これにはリーダーの「腹の括り方」も求められるでしょう。
「スタッフは絞り込まれた一つのKPIを達成しさえすればよく、それで成果が出ないのなら、ロジックを決めたリーダーが責任をとる」という覚悟が必要だからです。
KPIの本質は、管理ではなく「発見」にある
KPIの本当の価値は、数字を掲げ、細かく管理・監視することにはありません。
自社のビジネスを徹底的に分析し、どこにボトルネックがあり、何を改善すれば全体の目標の数字にとどくのか。その「業績につながる決定的なファクター」をロジックで把握し、特定することにこそKPIの意義があります。集中すべき成果への最短ルートを見出し、努力の方向性を明確にすることがKPIの価値なのでしょう。
正しい努力を生む、重要な事前準備がKPIマネジメントの本質なのです。
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