SNS時代の自社ブランドの「立ち位置」とは?
サッカーのワールドカップが閉幕しました。寝不足になりつつも、日本代表の戦いぶりに胸を熱くした方も多かったのではないでしょうか。
企業広報の目線からは、今回の大会を通じて日本代表チームの「ブランディング」について考えるところがありました。JFAでは、公式YouTubeの「Team Cam」を通じて、チームの舞台裏のすべてを見せています。緊迫したミーティングの様子や、リラックスしたプライベートの姿、本音を引き出すインタビューなど、選手の素顔に触れることができます。かつては雲の上の存在だったスター選手たちが、ずいぶんと身近に感じられるようになっています。
こうしたものを見るとき、近年のブランドが「憧れ」から「共感」へとシフトする流れを感じます。この「憧れ」と「共感」という2つの感情を、企業はどのようにコントロールしていくべきでしょうか。
「サポーター」を巻き込む、共感ベースのマーケティング
サッカー界では、観客は「ファン」ではなく「サポーター」と位置付けられます。サポーターはチームの一員です。だから、多くのクラブチームでは背番号「12」をサポーターのための番号として欠番にしています。これはまさにファンを当事者として巻き込んでいくための施策です。
この「巻き込み型(共感ベース)」のマーケティングは、エンタメ界ではAKB48が先駆者だといえるでしょう。
それまでのアイドルといえば、ブラウン管の向こう側にいる手の届かない「高嶺の花(=憧れ)」でした。しかしAKB48は、「会いに行けるアイドル」をコンセプトに掲げ、選抜総選挙という形でファンを巻き込みました。これはまさに、SNS時代・推し活時代を先取りした仕掛けだったと言えます。
- 憧れ:遠く手の届かない、完璧な存在(縦の関係)
- 共感:身近で親近感を持てる、等身大の存在(横の関係)
現代のブランドは、多くの場合この「異なった2つの感情」が混ざり合っています。これらをどのように混ぜ合わせ、コントロールしていくかが、その会社のブランドの立ち位置を決めるようにも思います。
企業の広報はどうあるべきか?
Xなどでは「中の人」マーケティングが定番となっています。これは、まさに企業に人間味を持たせ、身近な存在として「共感」を得ようとするアプローチです。親しみやすさが武器になり、ファンの獲得に繋がっています。
しかしその一方で、エヌビディア(NVIDIA)やスペースX(SpaceX)といったテクノロジー企業に対して、私たちは親近感よりも、圧倒的な技術力に対する「尊敬」や「憧れ」を抱いているかもしれません。憧れを刺激したいならば、身近すぎることはマイナスとなります。
憧れを大切にしたいなら
SNS時代において共感性のないブランドは、存在しえません。一方で、カテゴリをリードする存在であったり、「いつかは手に入れたい」と目標にされるような商品を持つ企業は、簡単に敷居を下げて「共感」に全振りするわけにはいきません。安易な親しみやすさは、ブランドの威厳や価値(=憧れ)を損ねるリスクがあるからです。
企業の持つ「理念(パーパス)」や、開発の裏側にある「人間的なストーリー(パーソナル)」の部分で共感してもらいながら、一定の敷居の高さを保つというバランス感覚が必要なのでしょう。サッカーの日本代表チームの広報活動においては、こうしたバランスのとり方が良くできていた、という印象を持っています。
憧れか、共感か
ブランドが「憧れ」から「共感」へとシフトしている流れは、確実にあるのでしょう。しかし、「親しみやすさ」だけでは企業価値は高まりません。自社は、市場にとって「お手本(憧れ)」となる存在を目指すのか。それとも、顧客の一番近くに寄り添う「伴走者(共感)」となるのか。このバランス感覚こそが、これからの時代を生き抜くブランド戦略の大きな課題になるように思います。
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